小さな花たち

旅先や日々の生活で見過ごされそうなひとときを、思いのままに綴ります

夏の朝の静かな海岸で…

夏の朝早い時間帯に、車窓から人けのない海岸が見えた。車を停めて、海岸に降りてみる。すると、親子で二人だけ、砂遊びをしていた。その光景があまりにも美しく、思わず遠くからシャッターを切っていた。

私の故郷も海に面した県で、子供の頃から海は比較的近い存在だった。中学生のときには、学校から歩いて10分くらいのところに海があり、体育の先生が、「よーし、今日は海まで走っていくぞ!」と言うと、みんな大はしゃぎした。しかしその海は、観光客に人気で、いつも人がいっぱい。体育の時間には海まで走った後、海岸のゴミ拾いをしていた。

家族ともよく海を訪れたが、潮干狩りや海水浴という「イベント」や人混みと、海はいつもセットだった。私の中での海のイメージは、人が多くいる場所だった。人が全くいない海岸を探そうとしても、私の住んでいる地域では難しいくらいだった。

今、住んでいる県の海岸には、手つかずの自然が多く残っている。人が少ない、あるいは、全くいない海岸を見つけるのは容易だ。海岸沿いに国道を車で北に進む途中、どこでも人のいない海岸を見つけて立ち寄ることができる。

朝早く、親子だけで砂遊びをしながら、静かに語り合う時間。自分が体験できなかったことだ。その貴重な二人だけの時間を邪魔しないよう、近寄らずに、静かに立ち去った。2年前に他界した母の若い頃の面影を重ねながら、もし母と私があそこにいたら、どんな時間を過ごしたのだろうと考えながら…。

阿字ヶ浦海岸(茨城県