小さな花たち

旅先や日々の生活で見過ごされそうなひとときを、思いのままに綴ります

紅葉の「フォトスポット」?

ずっと行きたいと思っていた紅葉スポットの渓谷が、あるサイトで「今見頃」となっていたので行ってきた。そういった情報をもとに見に来た人もいたのだろう、平日なのに駐車場は混んでいた。ネットやテレビでよく目にした、渓流にかかる真っ赤に染まった橋を見るのが待ちきれず、その橋を目指して足早に歩く。20分ほど歩くと目的の橋が木々の間から見えてきたが、少し不安な気持ちになった。あれ、あの真っ赤な紅葉シーンがなさそう…。周囲の木々は、赤いどころか、まだ緑色だったり枯れているものもあり、いずれにしても、紅葉の見頃とは程遠い状態だった。橋まで到着したが、嫌な予感は的中した。そこに想像していたものはなく、違う場所に間違ってきてしまったかのような感覚すらあった。来ていた人も所在なさげにうろうろと橋の上を行ったり来たりしている。1か所だけきれいに色づいている木があり、そこにだけ人が集まる、なんて状態だった。

例えば、日の出スポットなら、今は曇っていても少し待てば、望み通りの光景に出会える可能性はあるが、紅葉については、ここで待っていてもすぐに色づくわけではない。とにかくまだ見頃ではないと諦め、これ以上ここにいても寒いだけだからと、来た道を帰る。帰り道、15人くらいのツアー客のグループとすれ違った。彼らも皆、あの真っ赤に染まる橋を思い描きながら、今、歩いているのだろう。あの景色を見たら、どう反応するだろうか、引率者はどうフォローしたらいいのだろう、などと余計な心配をしたりする。

そんなことを考えながら歩いていると、行きには気づかなかった茂みの中に、見事な紅葉を見つけた。行きには、橋のことしか頭になかったから、ほとんど目もくれず気づきもしなかった場所に、橋のところよりもいい景色があった。ネットやテレビなどから得た情報で、この渓谷の紅葉と言えばあの橋、という印象が自分の中に根づいてしまっていたので、行きには橋を見ることが目的となっていたが、よく考えれば、渓谷全体が見頃なのであって、橋の上が見頃なわけではない。木を見て森を見ず、な感じだ。文字通りにすれば、橋を見て森を見ず、か…。上の写真は、この渓谷のフォトスポットである橋から撮影したのではなく、そこに行く途中の茂みの中、ほとんど誰にも目を止めてもらえず、ただひっそりと美しい景観を作り出している場所で撮ったものだ。

ちなみに、フォトスポットとして有名な橋の上から撮った写真は、以下の通りである。紅葉真っ盛りの写真と比較できるよう、別サイトのリンクも入れておく。下の写真の緑色の葉がまだたくさん残っている景色と、上の茂みの写真と、どちらが紅葉の見頃かは、一目瞭然だ。

2023年11月20日撮影。写真がやや傾いているのは、落胆のあまり、写真撮影にもやる気が出ていない表れか…

www.city.takahagi.ibaraki.jp

紅葉狩りに行くときに、どうしてもネットやテレビなどで取り上げられているフォトスポットとして有名な場所に注目しがちだ。でも、ほかにもあまり知られていない美しい場所がたくさんあるはず。今、有名なフォトスポットでも、最初から有名だったわけではない場所が多くある。身近なところにも見事な紅葉があるかもしれない。そんな自分だけの超穴場紅葉フォトスポットを開拓するのもまた、楽しい紅葉狩りだと思う。

※上の茂みで撮影した写真と同じ場所で撮ったショート動画をアップしました。写真よりも、紅葉の様子が伝わると思います。

youtube.com

花貫渓谷(茨城県