小さな花たち

旅先や日々の生活で見過ごされそうなひとときを、思いのままに綴ります

涼を求めて… ①

「涼」と言えば、以前、訪れた鍾乳洞が思い浮かぶ。日本屈指の規模を誇る秋芳洞では、一年を通して17℃程度の温度のなか、1キロの観光ルートを探索できる。とにかく広くて、そのスケールの迫力に圧倒される。青や緑色などにライトアップされた鍾乳洞もいいが、ここでは、通常、白色の照明のみだ。しかし、そのほうが闇とのコントラストが際立って見えて、奥行きが感じられ、シンプルに、またダイレクトに自然の神秘や迫力が伝わってくる。そして、秋芳洞に行ったら、日本最大級のカルスト台地秋吉台にも立ち寄りたい。約8キロ続くカルストロードは、ドライブに最適だ。広い草原の中を走り抜けるとき、ここは日本?と一瞬思ってしまう。展望台もあり、この大パノラマを目の前にすると、暑さなど吹き飛んでしまうかのようだ。

涼を求めている人に人気だ、ということで最近テレビで取り上げられていたのが、栃木県の大谷資料館だ。大谷石の地下採掘場跡は、大谷石を掘り出してできた地下空間で、30℃以上ある日でも坑内の温度は12℃程度と、上着が必要なくらいの温度だ。ライトアップされた空間は幻想的で見飽きず、巨大な神殿と表現されることもあるが、外からかすかに入ってくる光に照らされた空間もあり、それもまたとてもいい。大谷石を使った雑貨を楽しめるセレクトショップを併設したカフェもあり、私は大谷石でできたキャンドルスタンドを購入した。

この資料館とあわせて訪れたいのが、宇都宮駅から歩いて5分くらいのところに忽然と姿を現すカトリック松が峰教会だ。大谷石を使って建てられた、近代ロマネスク様式の建築物で、登録有形文化財になっている。聖堂内も美しいのだが、私はとりわけその外観が好きだ。聖堂への入口に続く左右からアプローチできる正面階段と、日本では珍しい双塔のフォルムが美しい。宇都宮駅周辺で、突然、中世ヨーロッパの小道を散策していたかのような気分にさせられる。大谷資料館を訪れた後にここに立ち寄ると、地下採掘場跡とはまた違った雰囲気の大谷石の魅力にふれられる。教会の敷地内や内部の見学も可能で、ここでは、心の「涼」を感じることができると言えるだろう。

秋芳洞秋吉台山口県)/大谷資料館、カトリック松が峰教会(栃木県)

写真は、秋芳洞