小さな花たち

旅先や日々の生活で見過ごされそうなひとときを、思いのままに綴ります

キャンドルの灯りを見つめながら…

緑色の灯りがともるキャンドルスタンド。いくつか持っているキャンドルスタンドの中でもお気に入りの一つ。かなり前に、都内のモロッコ雑貨のお店で買ったもので、溶けたロウがくっついてしまって、汚くなってしまった。下のほうには、ラクダの絵が描かれている。冬になると、キャンドルを灯すことが多くなるのだが、いつも愛用しているものだ。

小学生の頃、友人2人と物語の交換日記のようなものをやっていた。1冊のノートに1人が物語を書き、次の担当の人に手渡す。手渡された人は、続きを書いて、3人目に渡す。そうやって、1つの物語を作っていくことを楽しんだ。なぜそんなことをやっていたのか、よく覚えていないのだが、私は友人の1人が書く独創的な内容に、いつもわくわくしていた。自分が思いもしない方向に物語が紡がれていく。自分が書き終わって、友達の手に渡り、戻ってきたときにどんな物語になっているのか、ノートを開くのが楽しみだった。

そんなことをやっていた頃に、独創的な友達から刺激を受けて、自分だけで別の物語を書いたことがある。そのタイトルが、「モロッコの夜汽車」だった。どうしてそういうタイトルにしたのか、内容はどんなものだったか、これも記憶にないのだが、その当時から、「モロッコ」という音の響きが好きで、遠い行ったことのない国への憧れを抱いていたことは間違いない。

以前、乾燥肌に悩んでいたときは、アルガンオイルの化粧品に助けられた。ちょうど動物実験を行っていない、オーガニックな化粧品などに関心を抱き始めた頃だ。ちょっと高価でも、自然派のものを使うことに気持ちよさを感じていた。説明書に掲載された、アルガンオイルが採れるアルガンツリーの写真に癒された。そのアルガンオイルが、モロッコ産のものであったと、つい最近になって知った。モロッコタジン鍋は日本で購入したものだが、とんがり帽子のようなふたの形状が、イスラム建築に見られるタマネギ型の屋根を想わせ、わざと見えるところに置いて、インテリアとしても楽しんだ。

その憧れの国であり、行ったこともないのに身近なところでふれていたモロッコで、多くの人が地震で亡くなり、またこれを書いているこの瞬間も、物理的にも精神的にも困難な状況に置かれている人がたくさんいる。遠いと思っていた国でも、世界は、どこかで自分とつながっている。美しいキャンドルの緑色の灯りを見つめながら、これまで自分に癒しの時間をくれていた国と人々に対して心からの想いを寄せようと思う。