小さな花たち

旅先や日々の生活で見過ごされそうなひとときを、思いのままに綴ります

朝のマクドナルドで…

私鉄の駅から歩いて2分のところに住んでいたときのこと。駅前にマクドナルドがあり、そこで過ごす朝のひとときが、とても好きだったのを思い出す。駅に近いところに住んでいるのだから、すぐに電車に乗ればいいようなものなのに、わざわざ乗る電車の時刻の1時間前に家を出て、マクドナルドに行く。そこで約1時間、コーヒー1杯をお供に、その日の仕事の手順や1週間のスケジュールの確認などをして過ごす。そこのマクドナルドは、各席の周りに囲いがあり、半個室みたいな作りになっていて、それが居心地の良さの理由でもある。早朝の店内に人はほとんどいず、話し声は全くしない。飲み物のふたを開ける音や、朝のメニューであるマフィンの包装紙のカシャカシャという音、その他のかすかな音だけが、BGMと一緒に聞こえるだけだ。半個室みたいなので、スクラップした記事を整理したり、新聞紙を広げたり、思い思いの過ごし方を楽しむ人が多い。恐らく、ブログを書いている人もいただろう。

そんな時間帯にかかるBGMで、いいなと思う洋楽があることがある。しかし、誰の曲かわからない。今は、スマホで音楽を聴かせるだけで、楽曲名やアーティスト名を検索できるアプリなどあるが、その当時は、そのようなものはない(あるいは、単にあることを知らなかっただけかもしれないが)。そこで、そのとき私がやったことは、その音楽から流れてくる歌詞の英単語を聞き取り、ネットで検索する、というものだった。たいていの場合、ネットに歌詞がアップされているので、歌詞から曲名にたどり着くことができる。歌詞を聞き取るのは、まさにリスニングテストのようで、うまくいくときは曲名を一発で探し当てることができるのだが、一般的な表現の英単語しか聞き取れないと、たくさん検索結果が出てきてしまい、曲探しは困難を極める。

この方法でもわからないときは、どうするか。ネットでいろいろと調べていたら、マクドナルドにBGMについて問い合わせると、教えてくれるという記事を見つけ、私もやってみた。知りたい曲がかかっていた店舗と時間帯を明記してメールで問い合わせる。すると、すぐに返信が来て、20曲くらいの曲目リストと、それがかかっていた時間帯が秒単位で細かく記載されたものが送られてきた。しかし、その中に探している曲はなかった。そこで、「別の〇店でもかかっていた、ここでは〇の時間帯でかかっていた」と再度、問い合わせると、今度は、その時間帯のみでなく、1日の100曲くらいのリストが送られてきて、びっくりしてしまった。1曲ずつ確認するのも大変だったが、その中に、探していた曲はあった。

以前、冬に深夜バスで大阪まで行ったとき、着いたのは、まだ夜明け前だった。寒くてどこで時間をつぶそうかと困っていると、マクドナルドの黄色いMが目に入った。周りは真っ暗なのに、そこだけ明かりがついていた。この「どこにでもある温かい場所」がマクドナルドなのかな、とそのとき思った。BGMなどという、飲食店にとっては、ある意味、二次的なものに対しても、手を抜かずに対応してくれることが、「どこにでもある温かい場所」を生み出すことにつながっているのだろう。

ところで、最後に、このブログを読んでくれているあなたに、私が私鉄の駅前のマクドナルドで、リスニングテストをして、なんとか探し当てた曲を贈りたいと思う。晴れた日の朝、仕事に行く前にこれを聞いたとき、そのソフトな曲調と歌声に、心癒されたのを覚えている。寝起きの体にすっと入っていく白湯のような、朝にぴったりの曲。あなたにとって、今日一日も穏やかな一日となりますように…。

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