小さな花たち

旅先や日々の生活で見過ごされそうなひとときを、思いのままに綴ります

「何もないところ」

2年前に首都圏からここに引っ越してきたときに、あるお店の人が私に言った。「よくこんな何もないところまで来ましたねえ」。それは、「ようこそ、何もないところですが」といった歓迎の気持ちを込めた言葉だったと思うが、こんな風に言われてしまう「何もないところ」ってかわいそうだな、とちょっと思った。

確かに、「〇〇市」と言えば、「ああ、あの観光名所で有名ですよね」と言われるようなところは数多くある。しかしよく考えてみれば、それよりもはるかに多くの市町村などが、「それ、どのあたりですか?」と言われるような、聞いたこともないような名前の場所だろう。読み方がわからないものもあれば、自分が住んでいる県の町でも場所があまりよくわからない、何があるのかわからない、という場合もある。

そんな「何もないところ」の一つに引っ越してきた私の新たな趣味がウォーキングだ。「何もない」ということは、都会にはない視界が開けた風景がすぐ近くにあるということ。それで、歩くのが楽しくなったのだ。そして、遠くを見ることが多くなったから、視力もよくなった。そんな場所を歩いていると、いろいろな発見がある。同じ道を歩いていても、時間帯や季節によって、「何もないところ」は異なる表情を見せる。それらを写真に残してみると、あることに気づく。あれ、これが「何もない」場所なんだろうか、いろいろあるじゃないか、と。

「何もなく」ても、そこで生活し、学校で勉強し、あるいは仕事をしている人がいる。毎日、夕暮れ時には家々に灯りがともり、海岸沿いにある工場の煙突からは絶えず白煙が出ている。洋上風力発電のための風車も回っている。都心に行った帰り道、高速道路を走る車からこれらが見えると、ああ、家に帰ってきたな、と思う。私にとって一番好きな場所は、今、住んでいるところなのだ。そういった「何もない」ところでも、人々の日々の営みがあることを愛おしく思う。

どんな場所にも、その場所なりに美しい風景がきっとあるだろう。多くの「何もない」と思われている場所にも、必ず何かあるはず。もしあなたが今、住んでいる場所をあまり気に入っていなかったとしたら、今日、少しだけ歩いてみて、見つけてみませんか。

神栖(かみす)市(茨城県

 

市役所裏の緑地公園。1周4.4キロの池があり、10種類以上の野鳥が見られる

 

ウィンド・パワーかみす第1洋上風力発電所神栖市は、日本初の本格的な洋上風力発電所が誕生した場所。誰もいない海岸で景色を満喫できる

息栖(いきす)神社。鹿島神宮茨城県鹿嶋市)と香取神宮(千葉県香取市)とあわせて東国三社とされる。鹿島神宮香取神宮までは、それぞれ車で20分ほど。東国三社に共通のお守りがあり、本体となる木のお守りをどこか1社で買い、残り二社で、色の異なるシールを購入して本体に貼れば完成(最初の1社のシールはすでに貼られてある)。

イギリスで出会った景色と一瞬、似て見えた(?)風景

季節によって、この景色は変わる。冬は緑がなく、一面、荒涼とした砂漠のよう

地元の人ですらほとんど行かない夕日スポット、なさか夕日の郷公園

*ここまで読んで、神栖市に関心を持ってくれた方へ。神栖市がどこにあるかは、市のキャラクター、カミスココくんが、ものすごくわかりやすく示してくれています(頭は茨城県の形。神栖市はココよ、と教えてくれています)。ちなみに、好物はナタデココみたいです。

カミスココくんプロフィール / 茨城県神栖市 (city.kamisu.ibaraki.jp)

*ほとんど誰からも注目されない場所が、日の光を浴びてきらきら輝いている。そんなところを歩くときに気分を一層盛り上げてくれるのが、この音楽。

(288) "Say So" - Doja Cat - Cover (Violin) - YouTube